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無言の俺を、切れ長の瞳でしばらく見つめてから呟いた。
窓際に座る道也の顔は、茜色に鮮やかに染められた太陽のせいでよく見えなくなっていた。
「早くお前が大事に出来る女が現れますように」
道也の顔を見なくてもわかった。
きっといつものおちゃらけた瞳でなく、真剣に俺を見ている。
俺の上辺の感情を見透かし、尚包み込む様な暖かさは道也の魅力でもあったが、今の俺には正視出来なかった。
静かに呟かれた言葉。
それはきっと……
道也の祈りに似た
……願い。
「なぁに言ってんだよ」
そう返した………こんな弱い俺には
道也の祈りが叶う事はないと
思っていた。
*
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