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試験最終日、7月1日。
「おはよう、虎狼」
道也が気持ち悪い。
試験日なのに笑っている。
…なんでこんな朝から明るいんだよ。
いつもテストの時は、別人の様に暗いはず…と訝しく思って親友を睨む。
しかも今日は何だか低血圧気味な俺は、無駄に爽やかな道也の顔を不機嫌に眺める。
「滅多に使わない脳ミソ使って、どっかおかしくなったのか?」
「んな訳ねーだろ?お前今日はお楽しみがある日じゃないか」
試験勉強一色のクラス中に無駄に元気な声が響く。
テスト前でピリピリしている神経が逆撫でされたのか、一斉に視線が道也に集まる。
が、声の主が道也だと認識されると皆一様に教科書や参考書に意識を戻した。
こいつが騒がしいのは、何も今日に始まった事ではないからだ。
「今日、転校生来るんだろ?」
太陽の匂いすらするのではないかと思うほどよく陽に焼けた顔を寄せてきて、小さく道也は囁いた。
…あぁ、忘れていた。
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