暖かい手

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幼い頃は、母と二人だった。 小さなボロいアパートで、俺たちは暮していた。 俺の母のイメージは、 優しい笑顔とか 暖かい腕の中とか 美味しいご飯とか …そんな心地良い物は一つもなく、 酒を飲んでは幼い俺を殴り、 口汚く罵る記憶しかない。 そしてたくさんの血、薬、傷。 『あんたさぇいなければ』 『お前さえ出来なければ』 毎日の様にヒステリックに泣き叫んでは、あまりの様子に隣人が止めに入る。 母の苦しみなんて理解出来なかったあの頃の俺には、母は畏怖の対象でしかなかった。 怖かった 痛かった 大嫌いだった …淋しかった
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