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夜、いつもより早めにベッドに入って月華を抱いて、触り心地の良い髪を撫でていると
「ねぇ、虎狼」
月華が静かに俺を呼んだ。
「何?」
「梓と道也君の後1年って何?」
…道也に聞いたのか。
「…梓には婚約者がいるんだ。18になったら強制的に結婚させられるんだって。アイツ社長令嬢だから」
これが道也達の『期間限定』の関係の理由。俗にいう身分の差ってヤツだった。
「…そうなんだ」
「2人は別れる前提で付き合ってるんだ」
「何とかなんないのかな?」
少しの沈黙の後、月華は切なそうに小さく呟いた。
「んー…、今ンとこは何とも出来ないよね。2人の気持ちだけの問題じゃないから」
「…そうだよね」
また少しの沈黙が、静かな部屋を支配した。
部屋は薄暗いけど、月華が複雑そうな顔をしている事がわかった。
多分、余計な事で不安になっているんだろう。
「俺は婚約者なんていないから安心してね」
そう囁いて、俺は月華を強く抱き締める。
「考えた事が何で分かったの?」
「月華分かりやすいから」
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