回想と救い

33/43
前へ
/492ページ
次へ
  夜、いつもより早めにベッドに入って月華を抱いて、触り心地の良い髪を撫でていると 「ねぇ、虎狼」 月華が静かに俺を呼んだ。 「何?」 「梓と道也君の後1年って何?」 …道也に聞いたのか。 「…梓には婚約者がいるんだ。18になったら強制的に結婚させられるんだって。アイツ社長令嬢だから」 これが道也達の『期間限定』の関係の理由。俗にいう身分の差ってヤツだった。 「…そうなんだ」 「2人は別れる前提で付き合ってるんだ」 「何とかなんないのかな?」 少しの沈黙の後、月華は切なそうに小さく呟いた。 「んー…、今ンとこは何とも出来ないよね。2人の気持ちだけの問題じゃないから」 「…そうだよね」 また少しの沈黙が、静かな部屋を支配した。 部屋は薄暗いけど、月華が複雑そうな顔をしている事がわかった。 多分、余計な事で不安になっているんだろう。 「俺は婚約者なんていないから安心してね」 そう囁いて、俺は月華を強く抱き締める。 「考えた事が何で分かったの?」 「月華分かりやすいから」 *
/492ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2492人が本棚に入れています
本棚に追加