回想と救い

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  「虎狼、財閥って何?」 突然話題が変わった事に驚いて、俺は道也のにやけた顔を記憶の隅に追いやった。 「へ?何って?財閥って言葉の意味が知りたいの?」 「…そんな事位分かってるわよ。そうじゃなくって…もしかしなくても」 あ。言ってなかったっけ…。 「うちのオヤジ、宿世財閥の総帥だよ。基本的に日本にいない」 うちの今の財閥の拠点は世界経済の中心、NYだった。 「…跡取り息子が欲しい訳だね」 喉の奥から絞りだす様に月華が言った。 「あぁ、その話叔母さんから聞いた?」 「うん、聞いた」 少し申し訳なさそうに月華が頷いた。 「女が群がって来る訳が分かったでしょ?みーんな財産か俺の顔目当てなんだ」 「顔って軽く自慢してる?」 …いや、女がいつも『顔が好き』ってキスしてきたからなんだけど。 「それを関係なしに見てくれるのって月華だけだから」 「虎狼…」 「いつも俺の為に泣いてくれるし。どんな俺でもそのまま受け入れてくれるから」 それが何よりも嬉しい。 「月華と一緒の時だけ素直になれるんだよ」 *
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