2492人が本棚に入れています
本棚に追加
「昨日、虎狼怖い夢みてた?」
「…ん。見てたと思う」
「魘されてたから…」
昨夜はやっぱり心配して抱き締めてくれていたのか。
月華の優しさが俺を包み込んでくれる様な気がして、誰にも言えなかった悪夢の内容を話す事にした。
「昔の夢だよ。過去を見てた」
「過去?」
「…うちの母親は、ノイローゼでさ。今もどっかに療養してるみたいなんだけど」
月華が俺の服を握った。
「…ってこんな話聞きたくないよね」
「ううん、聞きたい」
「ありがと…」
礼を言うと、潤んだ瞳で俺を見上げた。
…泣き虫なくせに、俺を全部受けとめようとしてくれる月華が本当に可愛い。
「俺の母親は、酒を飲んでは処方されていた精神薬を飲んで、よく腕を切ってたんだ。気に入らない事があると…すぐ俺を殴って、お前さえいなければってよく詰られて。
水商売もやってたから男を連れ込んだりしてて、よく外に出されてたよ。…酒と煙草と血の匂い、そして知らない男の匂いが大嫌いだった。酒の匂いがすると、男の匂いがすると必ず殴られる、外に出される…自然に匂いに敏感になっていったよ」
*
最初のコメントを投稿しよう!