回想と救い

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  「昨日、虎狼怖い夢みてた?」 「…ん。見てたと思う」 「魘されてたから…」 昨夜はやっぱり心配して抱き締めてくれていたのか。 月華の優しさが俺を包み込んでくれる様な気がして、誰にも言えなかった悪夢の内容を話す事にした。 「昔の夢だよ。過去を見てた」 「過去?」 「…うちの母親は、ノイローゼでさ。今もどっかに療養してるみたいなんだけど」 月華が俺の服を握った。 「…ってこんな話聞きたくないよね」 「ううん、聞きたい」 「ありがと…」 礼を言うと、潤んだ瞳で俺を見上げた。 …泣き虫なくせに、俺を全部受けとめようとしてくれる月華が本当に可愛い。 「俺の母親は、酒を飲んでは処方されていた精神薬を飲んで、よく腕を切ってたんだ。気に入らない事があると…すぐ俺を殴って、お前さえいなければってよく詰られて。 水商売もやってたから男を連れ込んだりしてて、よく外に出されてたよ。…酒と煙草と血の匂い、そして知らない男の匂いが大嫌いだった。酒の匂いがすると、男の匂いがすると必ず殴られる、外に出される…自然に匂いに敏感になっていったよ」 *
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