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「5歳の時だっけ?月華が入園してきて、俺に手を差し出したんだ。憶えてる?」
名前の通りに暗闇に差し込んだ微かな…光。
真っ暗だった世界に、いつの間にか浮かんだ柔らかな月の様な…安心感。
自分の存在に迷ってしまった時、その灯りはどれだけ俺を救ってくれただろうか。
「うん…憶えてる」
「何度無視しても懲りずに来るもんだから。…つい手を繋いだんだよな」
その光はどんどん強くなって、あの頃の俺には本当に地球上のあらゆる生物に必要な太陽の様に不可欠な存在だった。
「…昔からしつこかったんだよね、あたし」
月華は気まずそうに笑う。
「すげー嬉しかった。ずっと繋がれた事が無い手を握ってくれて。その手が温かくて、離したくなかった…」
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