暖かい手

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  暗闇から引っ張りだしてくれたその小さな手は いつも俺を安堵させた。 母には呼ばれない俺の名前を呼んで、 暖かなぬくもりで俺を包み、 明るい笑顔で俺を引き付けて離さなかった。 拒絶される事が怖くて、 自分から手を伸ばす事は出来なかったけど。 差し出されたその手は、 彼女から離される事はなかった。 生まれて初めて「好き」をくれた彼女は、 こんなに汚れた今の俺の中にさえ、 綺麗な気持ちと一緒に残っている。 *
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