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「なぁ。虎狼」
親友の道也が俺を呼んだ。
「なに?」
手元の教科書から、視線を目の前のぶすくれた顔を隠さない道也にうつす。
学校内で一番歴史のある古い建物、図書館の中で俺達は今、テスト勉強をしていた。
「お前が勉強する必要性なくね?」
拗ねた子供のように不貞腐れた表情で呟かれたその言葉に正直呆れ果てた。
真顔で何を言いだすかと思えば…。
「俺がきちんと理解してなくて、誰がお前の赤点を回避してやれるんだ?」
眼前の道也を見れば、ただ勉強する事から逃げたいと言っている事は明白だった。
さすがに『(今回もヤバいから)教えてくれ』と泣き付いてきた手前、自分から放棄は出来ないとわかってはいるらしい。
俺は…勉強している…という感覚より、
〈どうやったらこいつに理解させてやれるか〉を考えている。
と言った感じなんだ。
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