藤壺

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のように君が素早く視線を戻し、宮の目を強く射る。 不意のことに驚き、宮は開きかけた唇の形もそのままに身をすくませた。 その目は、何かを告げようとしていた。 が、君はそれを決して言葉にしようとはしない。 宮に察してほしいと願っていることはわかる。 見つめる視線の中から気持ちを読み取ってほしいと訴えているのはわかるのだ。 しかし、宮にはそれが何であるのかわからない。 困り果て、 「源氏の君ーーー」 自分が何を言おうとしているのかまとめられないまま、呼んでみた。 戸惑う宮の気持ちはそのまま、口調にも態度にも表れているはずである。 それを君は敏感に察知したのだろう、宮の言葉を待たず、 「もう、いい」 ふいと目をそらすと立ち上がり、走り去っていった。 その背を、宮は首をかしげながら見送った。 そばにいてすべてを聞いていた命婦は、宮を咎めるように見て、 「源氏の君はきっと、元服のことが不安でいらっしゃったのですわ。大人びていらっしゃる方だとはいっても、本当に大人の仲間入りをすることになるのですもの、どうしたらいいのかわからなくて、お母君とも慕う宮様を訪ねていらっしゃったのでしょう。そのお気持ちを察して差し上げればよろしいのに」 と言うのに返して、
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