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の呑気さに、宮は呆れる思いを味わった。
「お美しい御方だというお話ですよ。あら、四つお年上ということは、宮様とおひとつしか違わないではありませんか。何だか不思議ですわね。たったひとつの違いで、あちらは奥方、こちらは義理とはいえ母君だなんて」
命婦は、さもおかしそうに笑っている。
一体何がそんなにおかしいのかーーーと、宮は甲高い命婦の笑い声に顔をしかめた。
そうしながら、今日一日、源氏の君を心配してあれこれ思っていた気持ちが一気に冷めていくような虚しさを覚えてもいた。
ああそうだ、元服の式を執り行うということは、君の世界が広がるということでもあったのだ。
これからは一人前の男として政(まつりごと)にも参加し、妻を迎えて一家を成し、あるいは妻以外の女性と思いをかわすこともあるだろうし、第二第三の妻を作ることもあろう。
そうして君の世界は広がり、やがて少年ではなくなってゆく。
宮は、自分でも気付かぬうちに、源氏の君がいつまでも可愛い少年でいるかのような錯覚の中にいたようだ。
光る源氏の君、輝く日の宮と、君と宮とが並び称されたあの日々がいつまでもつづくものと思っていた。
いつまでも、宮は君の一番近くにいられるものと思い込んでいたのだ。
なんと、愚かだったことか。
宮など源氏の君の世界の隅に在るものでしかなく、この先もっと君が大人になりその世界を広げてゆけば、すぐにどうでもいいものに成り果ててしまう程度のもの。
それを、なぜこんなにも
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