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『こわれた』
葵はステンレス製のスプーンを惣一郎に差し出した。
『あぁ真っ二つはダメだなぁ;』
受け取ったスプーンは、付け根当たりで二つに分断していた。
『待ってろよ』
ガチャガチャ…
惣一郎は引き出しから別のスプーンを取り出した。
『はい、次は気をつけるんだぞ』
『あぃ、あいがとっ』
葵はオムライスを黙々と食べ始めた。
『そうだ!葵ちゃん』
美和子が呼んだ。
『今日幼稚園の後、お買い物お手伝いしてくれるかな?』
『するっ!』
葵が目をキラキラさせながら言った。
『じゃぁちゃんと両手で重そうに持ってね♪』
『あいっ!』
葵はやる気満々だ。
『母さん…何買うの?;』
惣一郎は言った。
『ん?お米特売なの~♪お一人様一袋!拓ちゃんは危ないからおじいちゃんに任せて二袋で20キロ♪』
美和子はそう言って微笑んだ。
『お母さん、5才の女の子が20キロって違和感大だよ』
綾香が言った。
『大丈夫よ。この前も「お嬢ちゃん力持ちだね」って褒められてたから♪』
美和子はそう言って再び微笑んだ。
『…;』
惣一郎と綾香は絶句した。
『あっ!パパは知ってたけど時計止まってるから早く出ないと遅刻よ?』
美和子の言葉に綾香は腕時計を見る…。
『あぁっ!嘘!後10分じゃない!』
学園までは徒歩20分だった。
『おじいちゃん!ゴメン!送って!惣は準備して!』
『はいはい;』
惣一郎は遅刻しても別によかったけど、まぁいいか。と思った。
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