85人が本棚に入れています
本棚に追加
トイレから出た惣一郎はダイニングへ来た。
『母さん、ガキ外から開けられるようにしてくれよ』
美和子はなかなか食事しない弟に手一杯だ。
『ん~でも母さんは困らないからね~;拓ちゃんお茶で遊んじゃダメ』
弟は水遊びが好きで食事にならない。
『母さんは困んないだろうけどさぁ…』
『ママ~麦茶ちょ~うだい』
父が言う。
『あっ、はいはい』
美和子は、返事をしたが、弟に付きっきりだ。
冷蔵庫の扉が、ひとりでに開いた。
中からお茶のペットボトルが、父の方に、ふわふわと、飛んで行く。
フタが開き、父のコップまでもが、中に浮いた。
お茶が注がれ、父の手に…。
『ん、ありがと』
父は当たり前の様にそう言った。
今ダイニングでは、フライパンが中を舞い、目玉焼きを作る
火にかけられたみそ汁を、オタマが勝手に混ぜている。
食べ終わった食器は、中を舞い流しへ行き、スポンジや洗剤が、勝手に洗い始める。
これは、普通なら異常な光景だろう。しかし、小林家では当たり前だった。
これらの現象は、全て美和子がやっている。
『カギはパパに聞いて見て~。拓ちゃ~ん、食べようよぉ~;(困)』
と美和子は言った。
最初のコメントを投稿しよう!