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[宍戸亮夢]
季節は冬
寒さが厳しくなってきた
でも、愛おしい君を思うと
心がジンと熱くなる
‡愛してると言いたくて‡
寒さが冷え込む朝
何時もの様に朝練へと出掛ける俺
全てが何時もと一緒
変わることのない日常だった
『だった』と言うのは昨日までのこと
今日から何時も違う日々が始まる
白い息を吐き出しながら、慌てて走り出す
姫が待つあの場所へ
あれから数分走れば、家の前で待つ愛おしい君の姿
『おはよう』と言えば
可愛いらしい声で『おはよう』と返ってくる
頬をうっすらと赤く染めている姫が可愛いくてポケットに入れて温めていた手を頬に添え、冷えた頬を温める
『あったかいね…』
「馬鹿、何時から出てだんだよ」
朝、寒さが厳しくなったとはいえ、5分待ったぐらいではこんなには冷たくならない
ならば、それ以上の時間外に居たことになる
俺が言いたいことがわかったのか目線だけを逸らし小さな声で
『じゅ…15分くらいかな…あはは』
何て言う姫に俺は口元をヒクつかせた
「15分」という時間は口で言えば短い
だが、この寒い中マフラーや手袋などの防寒着を着用せず、その場から一切動いてない
そうなると「15分」という時間はとても長く、辛いものだ
ならば何故?という疑問を抱えながら姫を見れば困ったように俺を見つめ
『亮をね…待つのが好きなの』
恥ずかしさもなく、ただ笑顔を浮かべていう姫に俺はただ顔を真っ赤にするしかなかった
(コイツは…恥ずかしさがねぇのかよっ)
何て心の中で悪態をつくもやっぱり嬉しかったのか口元がニヤける
そんな顔を見られたくなくて片手で口元を覆い隠す
(顔は寒いから赤いと誤魔化せるだろ)
『亮…?』
不安げに瞳を揺らしながら見つめる姫に可愛いと思いながらも、ニヤける口元を必死に抑えながら眉間に皺を寄せ姫を見つめた
「…だからって、寒い中ずっと立ってんじゃねーよ、馬鹿」
(お前が我慢するのは嫌なんだよ)
優しい言い方が出来ない俺に俺は心の中で溜め息をつく
何時も何時も優しく言いたいと
姫だけには優しくと思っていても、それはとても難しく何時も失敗してしまう
頭でわかっていても、いざというときに恥ずかしさが先を行き実行出来ないでいる
(本当は優しくしたいんだよ)
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