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それから、白蛇の為の祠は宣言通りほんの数日で完成した。屋敷の修繕に使う木材の余りを利用し、吉備も一緒に手伝って、短期間でこしらえたとは思えないしっかりとした祠が出来た。去年の秋に刈って干していた藁で小さな注連縄を作ったのは吉備だ。それを祠の入り口に飾り、中には河原で見つけた石英を多く含む白い石を磨いて備えた。
祠は村を守る意味も込めて、村の入り口に当たる山道の途中に置くことになった。そうして更に数日が過ぎた頃、吉備がそっと祠を覗くと、そこには白蛇の子が藍堂の言う通りちゃんと戻っていた。吉備がその白蛇に〝白備〟と、自分の名前の一文字を使って密かに名前を付けていていたのだが、いつの間にかその名前が広がり、その後も長く呼ばれ続けることになる。
ーーー更に年月は流れ…
成長した吉備は、世市の後を継ぎ立派な大工になった。魄皇の屋敷や原野に建てた社は、修繕が必要になれば、その都度吉備や、その子孫達が手掛けて行く事になるのだが、それはまた別の話だ。
後日譚 其の弐 『陽月』 -余話- 完。
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