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「息抜きも必要だって言ったよな?その後、どうしたっけ?」
「ら、藍堂っ……あのっ…」
「なぁ、覚えてんだろ?」
両脚の間に無理やり身体を入れて、足を閉じられなくする。着崩れた着物の胸元から手を滑り込ませれば、真継の顔が更に赤く色付いた。
「私はっ…必要無いと答えましたっ……!」
そうだ。
合ってる。
でもーーー…
「俺には必要なんだよ」
あの日と同じ様に答えて、真継の唇を奪った。
一気に舌をねじ込んで、少し深い所でかき混ぜる。途端に唾液が溢れて、それを舌先で舐るように真継の逃げる舌に絡めてやると、ぐちゅぐちゅと卑猥な音がした。
「んッ…う、ふぅっ…ん、んっ…」
苦しそうに鼻先で息をして、必死に逃げようとする真継。俺の肩を両手で押し返してくるが、そんな抵抗は抵抗の内に入るはずもなく。
ーーー今日こそは引いてやらない。
「真継」
唇を解放してやると、つうと唾液の糸が伸びて二人の唇を繋いだ。風が吹き込み、燈台の火を揺らし、真継の唇がてらてらと光って見える。親指で下唇を拭ってやると、また肩を震わせた。昔と変わらない黒目がちな瞳が濡れていて、俺の欲望を煽る。
「藍堂っ……だ、駄目です…今日は…」
「昨日も、その前もそう言ってたぜ。もう待ってやらない」
「でもッ……でも…私っ……」
真継がどうして俺を拒むのか分からなくて、それが俺を苛立たせる。禁呪を成功させてから一年、あの悲しい戦いからはもう二年が過ぎる。真継は都からここに居を移すなど、しばらくは忙しそうにしていた。それに、あの出来事は関わった者達それぞれに、それぞれの影を落とし、皆がそれらと向き合い受け入れるのに時間を必要としていた。だからこそ、心の整理が付くまではと、俺も真継には触れずに過ごしていたのだがーーー。
それもどうやら限界で。
薄情だと思われてもいい。
そもそも俺は無情な鬼だ。
雪鈴には恩がある。魄皇には借りがある。二人の存在があったからこそ、俺は今こうして真継といられる。二人の存在は俺にとっても特別だ。だが、一番に大切なのは二人じゃなくて真継なのだ。
二年。
全く…よく我慢したものだ。
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