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「お前なぁ…」
そんな風に思われていたとは、かなり心外だ。「子供じゃない」の意味は、本当に言葉のままの意味だったらしい。真継は俺が思ってる以上に、純粋で素直なまま大人に育っていたようだ。
「だ、だって!子供に手を出したじゃないですか!だからっ……藍堂は幼い子供が好きなのかと…」
「そんな訳あるか!変な勘違いするな!俺はそもそもガキは趣味じゃねーんだよ」
「それじゃあどうして私をッ……あの時…私を……」
そう言って泣きそうな顔で見つめてきた真継は、まるで幼い真継のままだった。不安を感じつつも、必死に俺を求めている。その表情に胸が締め付けられた。こんな表情を真継にさせているのは俺だ。こんな表情はさせたくないのに。
ーーーあぁそうか。
あの時俺は、真継に何も告げず抱いたのだ。
そして、何も告げずに立ち去った。
何度も〝答え〟を求めた真継に対し、俺は何一つ答えてやらなかった。真継は陰陽師、俺は鬼。相対する存在…対極の者。本来なら交わる事は無く、決して相容れない。それなのに俺は真継に惹かれ、自分の欲望を抑えられなかった。真継の俺に対する気持ちを知っていて、利用した。幸せにしてやれる自信が無くて、思わせぶりに抱くだけ抱いて、真継の元を去った。
純粋な真継はどう思っただろう。どう考えただろう。やはり鬼は冷酷非情であり、ただ弄ばれただけだと思っただろうか。俺に稚児趣味があるのだろうと疑っていたくらいだから、 元服を迎えて子供ではなくなった自分には、興味が無くなったとでも考えたかもしれない。
答えをやらなかったから、真継は自分で自分を納得させる為の偽りの理由を作り上げたに違いない。そしてそれは、俺に非があるとするのではなく、自分にこそ非があったのではと、そう結論付けただろうことは、真面目な真継の事を考えれば容易に想像出来た。
辛いことをさせてしまった。
「すまん」
お前は何も悪くない。
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