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次は職場に携帯から電話した。
院長先生がとぼけた声で電話口に出てきた。
「はい?吉井ですが…?」
私はドキドキしながら携帯を握りしめた。
「あっ、アカリです。先生にお話があります。お時間よろしいでしょうか?」
院長の吉井は咳払いをして声を整えた。
「どうしたの…?」
私は泣き声で言った。
「母親が今朝方倒れたんです。脳梗塞で…。
だから、仕事を辞めさせて下さい。看病しないとだめなんです。
すみません…。ご迷惑をおかけします。」
私は見えないことをいいことに口紅をひきなおした。
「それは大変だね…。お母様についていてあげなさい。頑張ってね。仕事は気にしないでいいから!」
院長は落胆した声になっていた。
私は勤めを辞めた。
母親は元気だけど、病人にしてしまったことにちょっぴり懺悔の念があった。
これで看護師をしなくていいことになった。
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