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夕方になっていた。
足元から影が伸びて、背伸びしている私がそこに立っていた。
いつもなら、ジーンズにトレーナーで買い物に来ている時間。
今は引き返した駅前で切符を買っていた。
この改札は人生の改札口。
通り過ぎたら二度と帰らない。
私は足早に改札機を通り抜けた。
――前を向く。振り向かない。後悔しない。――
自分に何度も言い聞かせた。
私は母親と妻を辞めた。
携帯もとらなかった。子供からの着信だった。
辛い気持ちを封印するために携帯を川に投げ捨てた。
これで私は解放された。自由を手にいれたのだ。
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