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「ランブル…聞いた事ないな、誰だソイツは?」
シーフが聞いた。弐は外に出ていった。話に飽きたのか、警戒に出たのか。
「詳しくは分かりません…ですが、野心家のようです」
「クリスが失脚したのは、ソイツの讒言か…」
シーフは呟くようにいった。野心家なら、最上位に上り詰めようとするだろう。たとえどんな事をしてでも、である。ダイスは恐らく、反戦派だったクリスを嫌っていたのだろう。そこに、ランブルは目を付けた。
「なお、ランブルには一人娘がいるようです」
「…そうか」
シーフはため息混じりに立ち上がった。
「マリア、支度だ。すぐに出るぞ」
シーフはそう言いつつ、壁に掛けてあったダガーの入った皮袋を手に取った。
「…寂しくなりますね、ここを離れるなんて…」
感慨深く、マリアが言った。経緯は分からないが、思い入れのある家なのだろう。
「そんな事はない…と、言いたいところだが…」
シーフの眼光が鋭くなった。外が騒がしくなった。
「お頭!」
弐が叫んでいる。噂の暗殺集団が来たらしい。
「お前ら、盛大に歓迎するぞ…!」
「「ハッ!!」」
それぞれが武器を構えつつ、シーフを先頭に外に飛び出した。
数十人はいると考えていたシーフだったが、目に入ってきたのは一人だけである。仮面で顔を隠し、両手には鉄爪が備え付けられている。構えてはいないが、ダラリと両腕を垂らした姿は、何やら畏怖を覚える。
「舐められたものだな」
参が暗殺者を見据えたまま言った。
(舐められたのか、十分なのか…)
少なくとも、偵察の為の人間ではない。殺気がそう言っている。暗殺者が詰めるように駆け出した。
「数はこっちが上だ、囲んで潰すぞ!」
シーフはダガーを引き抜いた。自分でも、血が沸き立つのを分かった。
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