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斬りかかってきた暗殺者を、弐が防いだ。
「こいつ…!」
弐が力負けしている。それを見た参が、金棒を振り上げた。
「………」
暗殺者が無言のまま、弐を弾き飛ばした。回転するように金棒を避け、その勢いで、鉄爪で参を切り裂こうとした。
「させない…!」
六がダガーを飛ばした。鉄爪で弾いた暗殺者を、五が追撃とばかりに、ダガーで背中を刺そうとした。が、暗殺者は素早く五を蹴り上げた。
「カ…ハッ…!」
血しぶきが上がった。腹部から胸辺りまで、ざっくりと斬られている。
「姉さん!」
六が叫んだ。地面に伏した五は呼吸はしているが、起き上がろうとしない。暗殺者の足元で、何か怪しく光っている。
「…暗器か」
シーフがダガーを構えた。その後ろで、マリアが弓で狙いを定めている。
「五は私が看ておきます…専門外ですが…」
「…任せた」
マリアの放った矢を皮切りに、シーフが暗殺者に詰め寄った。矢は暗殺者の仮面を貫いたが、顔は避けている。仮面が外れただけらしい。
その隙に、シーフが斬りかかる。鉄爪で防がれ、そのままつばぜり合いになる。
「ッ…!やるな…」
シーフは嬉しそうに笑った。血が全身を、熱く駈け巡っている。暗殺者の眼は対照的に、暗くて酷く冷たい。同じ人間かと、シーフは頭の片隅で思った。
「…全ては…」
暗殺者が口を開いた。声は小さく、良く聞き取れない。
「王のために…お前は死ね!」
暗殺者は大きく口を開いた。中に筒のような物がある。
「……!?」
とっさにシーフは顔を逸らした。針のような物が、髪を突いた。
「この…!」
シーフは膝蹴りを暗殺者の腹に叩き込んだ。
「…貴様…!」
暗殺者が素早く飛び退いた。
「血が沸き立ってんだ…続きを殺ろうぜ?」
シーフが挑発するように言った。暗殺者はそれには答えず、森の中に消えた。殺気を放つ気配がなくなった。動きは俊敏らしい。
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