闇よりの魔手

5/7
前へ
/205ページ
次へ
斬りかかってきた暗殺者を、弐が防いだ。 「こいつ…!」 弐が力負けしている。それを見た参が、金棒を振り上げた。 「………」 暗殺者が無言のまま、弐を弾き飛ばした。回転するように金棒を避け、その勢いで、鉄爪で参を切り裂こうとした。 「させない…!」 六がダガーを飛ばした。鉄爪で弾いた暗殺者を、五が追撃とばかりに、ダガーで背中を刺そうとした。が、暗殺者は素早く五を蹴り上げた。 「カ…ハッ…!」 血しぶきが上がった。腹部から胸辺りまで、ざっくりと斬られている。 「姉さん!」 六が叫んだ。地面に伏した五は呼吸はしているが、起き上がろうとしない。暗殺者の足元で、何か怪しく光っている。 「…暗器か」 シーフがダガーを構えた。その後ろで、マリアが弓で狙いを定めている。 「五は私が看ておきます…専門外ですが…」 「…任せた」 マリアの放った矢を皮切りに、シーフが暗殺者に詰め寄った。矢は暗殺者の仮面を貫いたが、顔は避けている。仮面が外れただけらしい。 その隙に、シーフが斬りかかる。鉄爪で防がれ、そのままつばぜり合いになる。 「ッ…!やるな…」 シーフは嬉しそうに笑った。血が全身を、熱く駈け巡っている。暗殺者の眼は対照的に、暗くて酷く冷たい。同じ人間かと、シーフは頭の片隅で思った。 「…全ては…」 暗殺者が口を開いた。声は小さく、良く聞き取れない。 「王のために…お前は死ね!」 暗殺者は大きく口を開いた。中に筒のような物がある。 「……!?」 とっさにシーフは顔を逸らした。針のような物が、髪を突いた。 「この…!」 シーフは膝蹴りを暗殺者の腹に叩き込んだ。 「…貴様…!」 暗殺者が素早く飛び退いた。 「血が沸き立ってんだ…続きを殺ろうぜ?」 シーフが挑発するように言った。暗殺者はそれには答えず、森の中に消えた。殺気を放つ気配がなくなった。動きは俊敏らしい。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

138人が本棚に入れています
本棚に追加