静かなる胎動

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東の空が明るくなりかけた頃、森を目指すために壱の家を発った。森へ行くには、一度フィレスを横切ることになる。 「暗殺集団について、何か分かりませんか?」 壱が振り向いて弐に聞いた。少し顔が見えにくい。弐は首を振った。 「さぁ…分かってるのは、暗殺集団が作られた事と、最低でも二十人いる事くらいだな」 一人一人が暗器を使って、闇の中を暗躍するのを想像すると、背筋が凍る。 「噂だけでは、物足りませんね…」 「まぁ、そう言うな。コイツにしては、よく集めた方だと思うぞ?」 弐が参の頭を跳びざまに叩いた。弐としては、懸命に集めたのである。簡単に処理されるのは、少々癪に障る。 「おや、アレは…」 二人を放っておいて、視線を前に移した壱は、二人の影を見た。フィレスの開いた西門から差し込む陽の光が逆光となり、誰だが判断できない。ある程度近づいて、双子である五と六だと分かった。 「「久しぶりね」」 二人が同時に言った。同調は相変わらずのようである。 「よく分かりましたね」 壱の問いに、五は紙切れのような物をひらつかせた。 「余ったお釣りを、返しに来ただけよ」 「…それは、ご苦労様です」 悟ったように、壱は笑った。 「お前等も来るのか?」 参だけ意味が分からないように言った。 「何か悪い?」 説明するのが面倒くさそうに、五はぶっきらぼうに言った。 「何だかんだ言って、お頭のこと…」 弐の腹を、五が鋭く蹴り飛ばした。弐が悶絶している。 「アナタ、そんなに…」 五が弐の襟首を掴んだ。 「死にたいの?死んでみたいの?死んじゃいたいの?いや、むしろ死ね、て言うか死になさい…!」 弐が苦しそうに顔を歪めている。息が吸えないらしい。 「姉さん、抑えて!」 六が慌てて五を弐から放した。 「ゲホッ…ゲホッ…!あー俺、生きてる?」 「一応な」 涙目の弐の質問に、参が律儀に答えた。 「…ようやく終わりましたか」 呆れたように、壱が呟いた。日はすでに顔を出している。長居をし過ぎたらしい。
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