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四つん這いになり、壱が荒い息を吐いている。
「だ、大丈夫か?」
参が心配したように声をかけた。壱は大きく息を吸い込むと、吐き捨てるように言った。
「二度と、やるものか…!」
「ま、まぁそう降りる事もないし、心配するなって」
壱が苛立っているのを見るのは、初めてかも知れない。参は落ち着かせるように言った。
「…早く行きましょ」
五が促すように言った。木々が乱立し、先々は見渡しが利かない。暗い箇所もあり、薄気味悪さがある。
道らしい道はなく、草や木の枝が邪魔をする時は剣やダガーで払って進んだ。三十分位だろうか、広く空けた場所に出た。木は立ってなく、生えてる草は低い。射し込む光が、この場だけ段違いである。その中に、家が建っていた。煙突からは煙が立ち上っている。
「ようやくか…」
疲れたように、弐は呟いた。整備されていない道を進むのは、想像以上に体力を蝕む。
「……!」
六が弾かれたように後ろを振り向いた。
「…どうしました?」
森を凝視したままの六に壱が聞いた。
「…何でもない」
六は首を振った。気配を感じたが、気のせいのようである。
「そうですか…では、改めて訪ねますか」
家は木製である。どうやって建てたのかと、つい聞いてみたくなる場所である。それだけ、世間からは離れている。扉の前に立つと、妙な緊張感が辺りを包んだ。
「何か、緊張するな…」
扉に手を掛けた弐が呟いた。
「久々だからな、仕方ないだろう」
参が弐の代わりに扉を叩いた。
「…!おまっ…!」
参は早く開けろと言わんばかりに、顎をしゃくった。
(この野郎…)
心の中で悪態をついた弐は、扉を勢い良く開けた。勢いに身を任せば、上手くいく気がした。
「お頭!お久…!」
弐が言い切る前に、その体が吹き飛んだ。倒れた弐の上に、誰かがのし掛かっている。
「お…何だ、弐じゃねぇか。元気か?」
乗っていたのは一回り成長したシーフだった。何故か上半身裸である。
「急に何だ?こんな大人数で」
壱や参、それに双子を見たシーフが聞いた。その足下で、弐が声にならない悲鳴を上げていた。
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