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緋色はうなずく代わりに言葉を続けた。
『…そして…これがこれから一番大事な話だけど。』
大事と言いながら、心底つまらなそうな、どうでも良さそうな、声。
『ガーディアンを破壊されると、その【ノーマル】は作られた世界を失って、実際の【教会】を見る事になる。』
面倒臭そうに右手の刃を確認する。
『【教会】側はここをみた【ノーマル】が表に戻って話すのが面白くないらしい。だからアンタはもう出られない。』
『な…!』
男は驚愕し、青ざめた顔で呟いた。
『一生こんな暗い所で過ごすのか…それもいいかもな。』
自嘲気味に笑う男の耳に、
『…いいや。』
否定の声。
『そんな事にはならない。…実はもう一つ。ガーディアンを破壊した【イレギュラー】も出られない。正確に言うと、条件を満たすまで極端に移動を制限される。』
相変わらず面白くなさそうな声。
条件?制限?
男の声も届いているのかいないのか。
緋色は呟く。
『つまり私はアンタが見えなくなる距離までは行けない。…条件を満たすまでね。
…すまないね。私にもやりたい事があるんだ。』
ヒュ。
風を切る音がしたのと、
『…多分アンタが楽園に居る事と同じ位に。』
緋色が呟いたのと、緋色が初めて男の顔をちゃんと見たのは同時だった。
床に落ちた男の顔を。
しかし蒼い炎がすぐに男の頭部を灰も残らない程焼き尽くしてしまったので、緋色の記憶に男の顔が残る事は無かったが。
『さて…これで先に進めるな。…全く…性格の悪い。』
最後の言葉は誰に向けたものだったのか。
女は再び歩き出す――
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