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緋色は一歩後ろに下がると、それぞれの刃の束に付いた突起を腰のベルトに掛けた。
右腰に蒼、左腰に緋の刃。
『やり過ぎかも知れないけど、戦いに遠慮は無用って言うし。獅子は…何とかって聞いたことあるし。』
異形と緋色の距離は、ちょうど一歩。
『…雷火。』
緋色がぽつりと呟いた、その刹那。
緋と蒼。
二本の光。
灼熱と電雷。
前代未聞の、両手による二本同時の抜き打ち。
異形の左肩と左足は炎に焼かれ、上半身と下半身は雷光によって永遠の別れを告げた。
『………ッ…pg…hpg…』
それが異形の最後の言葉か、形容不可能の異音を遺し、出現した時と同様に、通路の波紋に沈んで行く。
緋色が手放した双刃もまた、音もなく波紋に落ち、消えた。
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