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両親はただ何かを強く言い合っていて、しゃくりあげる私の泣き声はまったく耳に届いていない様子だった。
暫くして、母親は呆れた様に溜息を付き、喧嘩を切り上げ、二階にある私と母の寝室に消えていった。
喧嘩が終わった。
安堵の息を付き、涙を拭った。
姉も安心したのか二階に上がって自室へ戻る。
終わった。
いや、終わればよかった。
暫く俯いていた父は強い足どりで階段を駆け上がり廊下をドスドスと歩くと、寝室に入り母を掴み上げた。そしてそのまま激しく相手を罵り、数度殴ったらしかった。(その時私は一階にいたから、これは姉の後日談なのだけれど)
姉は直ぐに部屋を飛び出し、寝室に行くとやめて!と何度も叫んでいた。
二階からなんとも言えない鈍い音と暴れる音がする。
父が暴力をふるっているんだと、一瞬で理解した。
私は優しい父親がダイスキだし、よく遊んでくれていたから、この自体が信じられなかった。
「あの」お父さんが、暴力?
結び付かなかった。
まだ理解出来ていない頭でとりあえず二階の声を聞こうとリビングで聞き耳をたてる。バタン!バタン!と激しい音がする中、お母さんの
「お姉ちゃんには手を出さないでよ!!」
という叫びにも近い声が聞こえた。
父が、姉にも手を上げたらしい。
どこかで、助けを呼ばなきゃ、とか
殺されちゃう、とか
次は私だ、とか
いろいろと考えていたけど、
体が勝手にお母さんやお姉ちゃんを助けようと動いていた。
階段を駆け上がろうとした時、姉と母が下りて来た。
父が二階で物にあたっている間に逃げてきたらしい。
ふらふらの母親をリビングへ入れる。
それと同時に父が二階から駆け降りて来たから二人でドアを強く引っ張って入ってこられないようにした。
姉と私の力で父親に勝てるとは思わなかったけど、母親を少しでも守れるならなんでもしたかった。
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