冤罪

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ドーピングの発覚した俺は、茜に捧げるはずだった“全国大会優勝者”の栄光の代わりの、“全国大会を穢した者”の汚名とともに停学期間を過ごしていた。 病院に戻された茜はずっと昏睡状態で、脳死が出るのも時間の問題だった。 「お母さん、信じてるからね。十字(クロス)はドーピングなんてする子じゃないって」 そんな言葉が何の意味も持たないことは、俺も、言ってる本人も、痛いほどによくわかっていた。 事の真相は想像が着く。 繰り上げ優勝になった七光りのバカ息子、鳴海塁。ヤツが親の金と権力を使って俺をハメたのだ。 買収された監察官さえいれば、証拠など必要無い。 世の中はその場にあった事実ではなく、力ある者により認められたジジツこそが真実となる。 そう出来ているのだ。 万民平等などという夢物語を唱える馬鹿は、精神科に通うべきだと俺は思う。
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