赤い目

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赤い目

線香の花がのぼる、 菊を手向け合わせた掌の隙間に揺れる。 懐かしさ月を辿る、 俺を呼んだ優しい微笑みに守られていた日々を。 あんなに綺麗だった町が、不安な空と生き。 遮っていた背中が突然消えて、 やけつく太陽に焦がれる。 俺はまだ何もしてやれないのに。 母校の窓に映る、 夢を走り抜けた不器用な笑顔と後悔。 夕焼けの静けさ響く、 降りだした雨に自分で傘をさしていく。 希望しか見えなかった目が、霞む世界に慣れて。 争っていた言葉が突然消えて、 立ち尽くす夕陽に焦がれる。 俺は貴方にはなれないけど。 合わせていた掌握り締めて、 少しでも近付けるように。 流れ出る弱さ、今日を最後に。
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