迫る世界

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ユリス=ローランドは街中を闊歩していた。 ジパングの某出版社は『その日』を明後日、9月11日と定めているが、それは正しくはない。だいたい公になることを恐れる『奴ら』の情報がメディアに漏洩するわけがない。偽のソースを与え安心させただけだ。 そして何も知らない愚かなメディアは、躍起になって国民に旨を伝える。その記事からは本格的な危機を感じられない。彼らはあくまで利己主義である。単なるこの国の使い魔に過ぎないな、ユリスは呆れたように吐露し、目的地に向かう。 馬鹿げている。 ただの一市民を救うために、わざわざ極東の地くんだりまで来た。SAS(イギリス軍隊のエキスパート)出のユリスにとって、こんなのただのお使いである。 わざわざ『部隊』の精鋭であるユリスを向かわせる理由ならある。恐らく現地で強襲されるだろう少年を保護し、『奴ら』を撃退する必要がある。人数が未確定である以上、一般兵にまかせられないのだ。 コーヒーショップを左に曲がり、大通りを早足で抜ける。 ブロンドの長髪を靡かせる彼に緊張感はない。それどころかうんざりとした表情だ。 (早めに終わらせ六本木にでも行こうかな……) 重要な任務が近づいているのに、彼はどこかマイペースだった。
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