迫る世界

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「畜生…!もうヤメだヤメだ」 ゲーセンの中の喧騒に負けたように神丘鞍馬はげんなりとした顔だった。 レーシングゲームの筐体から降りた彼は、随分軽くなった財布を一瞥し、溜め息をついた。 学校帰りの学生で賑わうここは、ゲームのバラエティーが富んでいて割りと有名だ。近辺の学生なら大体はここに通うだろう。 そのせいか、ついつい金を使ってしまう鞍馬は、禁煙中なのに思わずタバコを吸ってしまう愛煙家のように、忌々しげにUFOキャッチャーを睨んだ。理不尽である。 天気は本降りになってきていた。 「帰るか……」 これ以上ゲーセンにいても、財布の中身が磨り減るだけだ。 鞍馬は店を出て、傘を広げた。天気予報を信じて良かったと思う。 リアリストである神丘鞍馬でも、流石に天気予報は信じる。例えそれが全然当たらない予報でも、統計的に考えて算出されたのであれば、信じるほかないだろう。 要するに、彼は根拠があればどんな迷信でも信じるのだ。 実に科学者に向いている思想だ。仮説があって、検証して、それを定義付けることが出来たのなら、例え宇宙人でも神様でも存在を認めれる。あくまで根拠があれば、の話だが。
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