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同時刻、『ジパング』―――。
都会の高層ホテルから見える夜景は一段と美しい。
バスローブ姿の少女はバナナ片手にそんなことを思っていた。高級そうなワンルームに不釣り合いなアイテムである。
そんなアンバランス感をまったく無視して、少女は遠くの喧騒を見つめる。
茶色のセミロングに凹凸の少ないスタイル。透き通るほど色白の肌。
パッと見ではただの可愛いらしい女の子だろう。
しかし、
感情が読めない淡々とした表情。
爛々とした決意の炎が灯る両眼。
それは、ただの女子高生の顔ではなかった。
(必ず、必ずです)
『組織』からの命令ではない。
特別な縁があったわけでもない。
ただ昔の、『彼』との約束を守るために。
少女はテーブルに放置されている拳銃を手にとる。華奢な体つきに似合わない獰猛な武器だ。
(今度こそ食い止めます。そのための――――……)
少女は、決意した。
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