迫る世界

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神丘鞍馬は、現実主義者である。 宗教、神様、宇宙人、魔法、錬金術、占星術、空飛ぶ未確認飛行物体などは信じない。もちろんサンタクロースなんて言わずもがな、である。 誰かしらからの影響とか、幼少期の境遇など関係ない。ただ、目で見たものしか信じれないという概念を持っているからだ。傍目に見れば格好良いかも知れないが、同級生からは『冷めている』という印象を持たれている。 勿論、当の本人はそんなことも意識していない。くだらない妄想に、想いを募らせることに馬鹿馬鹿しいと感じているだけ。 「よぉ鞍馬!」 通学路である長い坂を上っていると、後ろから声がした。いちいち反応するのも億劫なので、鞍馬は前を向いたまま、 「おはよ」 「ったく、元気ねぇな!朝からそんなテンションだとお天道様も冷や汗もんだぜ!?」 と、肩をバシバシ叩いてくる。 前原一誠。 朝から鬱陶しいぐらいのハイテンションの持ち主を、鞍馬は忌々しげな眼差しで見た。 「んだよこのネクラマ!暗すぎんぞバカヤロー」 根暗な鞍馬が短縮されて、『ネクラマ』。友達である一誠が小学生のときに付けた、記念すべきアダ名第一号である。不名誉極まりないが。
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