迫る世界

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勢い良く走り出す一誠。鞍馬はその後ろ姿を眺めつつ、 「気になるな……」 幼なじみだからなのか。一誠が何か隠していることなんか、一目瞭然だった。 「はいじゃあ教科書27ページの例文。神丘君、訳して」 やわらかな日差しが鞍馬のうたた寝を誘ったことで、英語教師に当てられることになったが、 「第二次世界大戦後、日本経済は脅威のスピードで回復したが、第一次極東紛争時には、先進国としてトップの財政難におそわれた」 秀才。 翻訳を終え、鞍馬が静かに座る。 どこか悔しそうな顔をして、英語教師は授業を進めた。 退屈だ。 窓越しから空を飛び回る大鷲を目で追ってみたが、直ぐに視界から消えてしまった。 諦めた鞍馬がつまらなさそうにしていると、 「ねぇネクラマ」 背中をシャーペンでつつかれ、鞍馬は面倒くさそうに振り返った。 「あのさあのさ。今朝のニュース、見た?」 後ろの席から話し掛けてきたのは篠倉ルイ。明るく活発な少女だ。 「今朝……?いや、見てない」 「えぇ!?そんなの非国民じゃん!」 大声を出した後、授業中だということに気付いた彼女は、頬を赤らめ小さくなった。
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