迫る世界

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リンゴのように真っ赤になる彼女は、一部の男子から圧倒的な支持を得ている。鞍馬はあまりそういう目で見ていなかったが、なるほど。確かに顔立ちが整っているし、モテるのも無理はないと思う、と鞍馬はペンを回しながら考察した。 何とか難を逃れた篠倉ルイは、閑話休題と一息つき、 「……本当に見てないの?」 あまりに神妙な面持ちで訊かれたので、鞍馬はしどろもどろになる。 だが見てないものは見ていない。だいたい、今朝は靴下が一足だけ無くなったり、寝惚けて歯ブラシで便器を洗うなどして慌ただしかった。端的に言うと、そんな暇なかったのだ。 仕方ないだろー、と顔をふくらませながら鞍馬が言うと、 「じゃあ帰ったら見なきゃね!驚いて目ん玉飛び出るよ~?」 「バカ。そんな気持ち悪い現象になるくらいの時事ニュースなんか存在するか」 リアリストだから、という理由で頭ごなしに否定したのではない。ルイのあまりの誇張表現に呆れたからである。 とはいえ。 それほどのビッグニュースを何故見なかったのだろう?と鞍馬は頭を抱えた。なんだか自分だけ流行に乗り遅れたようで悲しい。 しかも『非国民』ときたもんだ。 知らないだけでジャパニーズ脱落は胸に来る。
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