前田慶次

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「大ふへん者」 └伝説の旗指物!! 前田慶次は謎の多い人物である。  前田慶次は、上杉家に仕えても、傾奇者として特異な人間性は改まることはなかった。そんな慶次には次のようなエピソードがある。  関ヶ原合戦のとき、奥州で働いた慶次の旗指物は、白く四角い布地に「大ふへんもの」と大書されたものだった。この旗指物を見た人々は、「上杉家には武勇の者が多いにも関わらず、このように『大武辺者』と大書した旗指物を使うとは思いもよらないことだ」と非難した。  すると慶次は、からからと笑いながら、「これは、これは、なんとも学問の素養のない者たちが騒いでいることよ。仮名の濁点をどこにつけるのかも知らないのか。私は、長年にわたって浪人をして金銀がないため、大不便者と称しているのだ。読み方を間違え、このような非難を受ける筋合いはない」と、反論した。  「大ふへん者」のエピソードは、慶次の傾奇者ぶりを物語るものとして広く知られる。ただ、この話からは、武辺者というより、受けを狙うコメディアンとしての一面が強く感じられる。「大ふへん者」という旗を作れば、文句を言われることを想定し、本当は「大不便者である」というおちをつけるという筋書きを練り、そして実行に移した。
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