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『まぁ…あの男は私を試すらしい。そこで少しでも私の力が出せることを祈ろう』
奈津は胸倉をつかむ土方の手を払いながら、芹沢が去った方向を見た
その瞳に感情は映っていない
「ま…まぁ、とりあえずだな…俺は永倉新八だ」
思い出したとばかりに、永倉は自己紹介した
それにつられるように、他の二人も自己紹介する
「俺は、藤堂平助だ」
「んで、俺が原田左之助。人呼んで、死損ねの左之助だ」
『死損ね…?』
奈津は訝し気な視線を原田に向けた
原田は得意気に自伝を語る
「いやぁ、昔切腹してな!ほれ、これが名誉の傷なん…」
『馬鹿馬鹿しい』
ここぞとばかりに、腹の傷を見せようとした原田の言葉を遮る
その視線は酷く冷めていた
『己で作った傷が名誉だなどと…よく言えたものだな。己で命を絶つなど、馬鹿のすることだ』
「確かに原田は馬鹿だが…切腹を馬鹿にするのは、許さんぞ」
『生きるのを諦めたやつのすることだろ?私には理解しがたいな』
「切腹は武士の最期の覚悟だ」
『死ぬ覚悟をする…笑えるな』
原田は土方の怒りにより、怒る機会を逃した
奈津は土方の言い分を鼻で笑った
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