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「入るぞ」
『……………』
今奈津は始めに通された部屋にいた
奈津のことを論議している間の待機場所だ
そこに訪れたのは斎藤であった
斎藤は返事を待つことなく、襖を開ける
奈津も前みたいに怯えることはなかった
「お前、いいのか?」
『今更か…』
「………」
『興味がある。壬生狼と呼ばれる鬼もどきの集団にも…本当の鬼がいる理由も』
そういって、奈津は斎藤を見上げる
斎藤は表情を変えることなく奈津を見下ろす
「お前には関係ない。しかし…」
『私に“主”はいない』
「そうか」
交わされた言葉は、何も知らない者からしたら、全く分からないものだった
「覚悟があるならついて来い」
『ないはずがないだろう』
立ち上がり、でていった斎藤の後を追う奈津
その顔には小さな笑みが浮かんでいた
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