第十七輪 少女と青年の涙

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『ごめんな…さ…い…。貴方を…っ、利用して…追、い詰めて…しまっ……ごめ…んなさ…っ!!』 次から次へと零れる涙。互いに握る手に力がこもった。 「違う!!利用したのは私の方です…っ!…私は…自分の価値を知りたかったから…っ、貴女を利用した…っ!!!私は…!!」 『…ケホッ…価値は…知るもの、でも…決める…もので…もなく、て……“気付く”…もの…で……それは…“人”から…しか…得られなゴホッ!ケホッエホッ!!』 咳と共に出る血。沖田は心を抱きしめた。流れる涙は心の手が拭ってくれる。 「もういいから…っ!!私が心さんも…!心さんの価値も守るから…っ、だから…っ…!!!」 起き上がった稔麿が、刀を手にした。刺さったままの小刀を見つめ、抜く。 「…くっ…心め…っ!!…殺す…!!!」 『…っ……兄を…っ…止めて……!』 最期の言葉を、願いを精一杯伝えようとする心。 涙を拭ってくれる心の手を沖田は自分の手と重ねた。 『“人”は…愛す…るため…に“人”…を、探…すの…です…』 「心さん…っ!!!!いやだ…っ…!貴女を…、失いたくない…!!!」 呼吸が小さくなる心は、頬を緩ませ笑顔を見せた。 『…わた…し、は…貴方…が…………す…………』 「…ころ…さん…??…心さん…っ。心さん!!心さん!!!」 沖田が揺すっても、笑顔のまま目を開ける事はなかった…。 …- 闇に慣れた目で心を探した。その目はもはや、獣になっている。心を殺す事でいっぱいの吉田は、足元にある物でさえも見るのがいらつくのか、刀で振り払った。 ヒュッ……… 顔を避け目だけを向けると、刀が掠めていた。頬から血が流れる。 「…あの小娘はどこだ…。出せば、貴様の命くらいは助けてや」 吉田が言い終わる前に切り掛かった。 「………黙れ…」 「…死んだのか…??どちらにしろ出せ。元の形も留めぬ程、切り刻んでくれる」 キィイン!!ガンッ!!! 殺意を込めて、吉田に刀を向ける沖田。 吉田は左にズレると一気に下から沖田に向けて刀を振り上げようとした。 ダンッ!! 「ぐっ…!」 だが、沖田が刀の鞘を使って吉田の足に突き刺した。 「お前だけは絶対に許さない…。先に地獄に送ってあげましょう…」
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