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「…えっと…あそこは台所になります。あの向こうの小屋は厠です。」
『……はい…』
ちらちらと心を気にしながら指をさし頓所の中のあらゆる場所を教えた。心は不思議そうな顔をして沖田が指した場所を見ていた。
『…この声はなんですか…??』
「あぁ…これは道場で稽古している人達の声ですよ」
首を傾げる心。沖田は踵を返して来た道を戻り始めた。心は慌てて後ろから追いかけた。
一定の距離を保ち沖田についていく。沖田はその距離がもどかしいのか、心に振り返った。
「あの…そんなに距離を開けられるとなんだか後ろが気になりますから……前に来て下さい…」
『…は…はい…っ』
早足に沖田の前に行き歩き始める。距離が縮まった事に安心した沖田は改めて心をまじまじと見た。
「…………」
自分より長いと思われる髪は柔らかに風になびき揺れ、その度に「綺麗な髪だな…」と思ったり、肩幅を見て自分の肩を触る。「小さいのだろう…」と感じたりしていた。
『……あの……』
「はい!!すみません!声に出てましたか?!」
『え??』
急に話しかけられた為、たじろぐ。が、心から話しかけてきた事に再度驚いた。
「いえ!な、何か…」
『…後ろ…が…気になります…』
「……じゃあ…並んで歩きませんか…」
再び、道場に向かって歩き始める二人。今度は一緒に並んで…。先程よりももっと言葉がなくなる。そんな空気のまま二人は道場についた。
激しい打ち合いの音や大きな居合の声に汗くさい道場。
「ここで皆さんは日頃から稽古をしているんです」
『………』
沖田はふと心に視線を移した。
口がぽかんと開いて魅入っていた。
「総司ー!!」
名前を呼ばれ心から顔を離す。二人の男が目の前に来た。
「相田の奴が総司はいねぇかって言ってるぜ??」
「そーとー天狗になってるみたいだから…な………何この可愛い子ー!!!」
『…っ!』
いきなりの大声に心は肩が跳ねた。
「あぁ…今日から」
「総司は絶対熟女派だと思ってたのにぃい!!!」
「待てよ新八!!もしかしたら惚れた熟女の娘に近づいてまさかのまさかで熟女の家に転がり」
「話しを聞きなさい」
黒い殺気を放ち、半ば脅しながら沖田が説明をすると二人は一気に泣き出した。
「俺達にできる事があったらなんでも言ってくれ!」
「あぁ!!力になるぜ!?」
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