第一輪 少女の理由

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『あ…ありがとう…ございます…』 深々と頭を下げる心。二人は思い出したように自己紹介を始めた。 まず、一人目は大柄な男。背は高くがっちりした体付きで、髪は短髪だ。さっぱりした雰囲気がある。 「十番隊組長 原田左之助!得意分野は槍に早食い!!」 二人目に視線を移す。 「二番隊組長 永倉新八だ。ま、新ちゃんとか呼んでくれていいぜ」 原田よりかは少し背は低いが、しっかりした体に、月代は入れておらず沖田と同じ高い位置に髪を結っている。髭の生えた顎をがしがしとかいていた。 雰囲気は原田とは少し違い、柔らかなおっとりした感じだ。沖田と少し似ているのだろうか… 『こ…心と言います…。よろしくお願いします』 また深々と頭を下げると二人から頭を撫でられた。顔を上げると目の前には稽古していたはずの隊士が全員永倉と原田の後ろに集まっていて、びっくりした。 「変わった恰好だな…」 「でも女子だぞ…いい香りがするな~」 「こりゃ、島原の女子以上に可愛いぞ…っ」 ひそひそと話す声に心は顔を俯かせた。永倉達は気付いておらず、沖田のみはその言葉を聞いていた。 「…そろそろ行きましょうか心さん」 『え……』 ムスッとした顔で心の手を引き道場を後にする。途中誰かに声をかけられたが構わず歩き続けた。 不意に立ち止まり心に振り返る。またもやビクッと怯え視線を反らした。 「…永倉さん達は反らさないのに…」 『……??』 小さく愚痴を零す沖田。心は首を傾げながらちらっと沖田を見た。ため息をつきながら再度心を見る。 「一応女中さんはいますけど、大半は男ばかりですから。気をつけて下さいね」 『え…は、はい…』 またもや沈黙になった。沖田はどうすればいいかわからずいろいろな所に視線を向けた。 『あの…手を…』 「……す、すみません!!」 慌てて離す。少し顔が熱い事を感じた。心は握られていた手を擦り後ろで手を組んだ。 「えと…何かわからない事があったら私に言って下さい」 『でもご迷惑をおかけするわけには……』 戸惑う心に沖田は安心させるように笑顔を向けた。 「私は貴女の世話係りですから。なんでも言って下さい」 …- 「……もう無理です……」 「だらしねぇな…」 夕刻、心を部屋へ返すのを見届けた沖田は土方の部屋に倒れ込んだ。
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