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「ただでさえ…あの子に話しかけただけで怯えさせる私が…世話係りに……」
「怯える??」
机に向かい書き物をしていた土方は、筆を置き沖田に向いた。
「…最初会った時に間者かもしれないと思い、殺気…出しちゃったんですよね…それから…話しかける度にずっと肩が震えていました」
「ふーん……」
そう言ってはキセルを取り出しくわえる。そんな様子を見て沖田はすねた。
「もっと優しい相槌はないんですか土方さん…」
「まぁ…お前は女っていうのが初めてだから仕方ないかもだがな…それだけで怯えるのはおかしい………」
腕を組み少し考える。沖田は手をとるように土方の考えがわかるのか、口を開いた。
「土方さんは彼女を疑いすぎですよ…」
「……えらく庇うじゃねぇか…」
「べっ…別に……」
動揺しながらも頬をポリポリとかき軽く否定した。土方は疑問に思いつつも机に向かった。
「…あの心ってのに惚れたか」
「私が誰かを好きになると思います??」
土方の問いにおもしろそうにクスクスと笑う沖田。そしてゆっくり立ち上がり障子を開けた。外の涼しい風が中に通る。月明かりが廊下を照らしていた。
「人なんて…斬る対象にしかすぎません」
土方に振り返り、ニッコリと笑うと足音に気付き再度廊下を見た。
「土方さん!」
「お。総司もいんじゃん!」
そこに永倉と原田がやってきた。二人は袴は脱ぎ、着流しになっている。もう任務はないのだろう。
「…なんだ…騒がしいな……」
「なんだじゃないっすよ!あの女の子!!ものっっっすごい可愛いじゃないですか!!」
「兄を探している最中に…っ…悲しみのあまりに記憶を無くすなんて……泣けるぜ!!!」
沖田は苦笑いしながら、土方は呆れて後ろ頭をかく。
しかし、ふと気になった事を質問した。
「で、どうしたんですか??二人が揃って来るなんて。まさか、それだけを言いに来たわけではないですよね??」
「んぁ??…あぁ。あの心ちゃんって子、夕飯に誘って広間に連れてったら、隊士達が興味津々でさぁ。怖がってるから総司に助け………あの……」
笑いながら話す原田の話を聞き終わらない内に、沖田は部屋の上座に真剣と置いてある、木刀を持って部屋を出た後だった。土方は二人に「馬鹿…」と呟くと、やれやれと立ち上がり部屋を出る。永倉と原田も慌てて続いた。
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