第一輪 少女の理由

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…ガヤガヤ… 「で?!今日からここに居るの?!よかったら俺の部屋に」 「それよりさ!俺の部屋で食事しない?!こんな野郎共と一緒なんて嫌でしょ」 『……っ……』 広間では大勢の隊士達が心の周りに群がり、興奮して心をまじまじと見つめたり、口説いていた。 心は俯き、肩を震わせながら、泣かないよう下唇を噛み締めて着物を握りしめている。 「怖がってんだろ!ねぇ??名前くらい教えてくれてもいいんじゃない??」 『………』 優しく促す一人の隊士に少し顔を上げ、ちらっと見る。 「み、見ろよ!!すげー可愛いぞ!!」 「もうちょっと上げてみようか~」 心に触れようとしているのか、手を伸ばしてきた。 『…ぁ…っ』 ボカッ!!! 「痛ってぇな!!だ…誰だ!!!」 「沖田ですが。何か」 頭を押さえ振り返った隊士だけではなく、全員が釘付けになった。 肩に木刀を乗せ、反対の手は腰に当てていらついた顔でどす黒い殺気を出しながら、隊士達を見下す沖田の姿があったのだ。その後ろにはさらに鬼の顔をした土方の姿も…。 「…く…組長…っ…副長殿も…!!」 「新撰組隊士が聞いて呆れるな…揃いも揃って鼻の下なんぞ伸ばしやがって…!!」 「この子は見世物じゃないんですよ。醜態を晒すのもいい加減になさい…!」 バシンっと木刀を畳みに叩きつけ、脅すと心の手を掴み立ち上がらせた。すると、土方に会釈をして広間を出ていった。 その後も土方の怒声が廊下から響いていたが、沖田は構わず歩き続けた。今だに握っている心の手が震えていたにも気付かず。 『……あの…っ…』 「……」 心のか細い声に立ち止まる。そこでやっと気付いたのか、手を離した。 「すみません…でしゃばった真似をして…」 『い、いえ…助かりました…。あの……』 沖田は振り返る事なく、その場を離れていってしまった。心は気にかけながらも自分の部屋に戻ろうとしたが、ふと目に入った柱を見て驚いた。自分の背丈より少し上に札が貼ってある。 『………』 【心さんの部屋】 札に手を伸ばし、何かを捜すようにキョロキョロするが、思い直し自室へと入った。 部屋に入るとすでに布団の用意がされていてその上にちょこんと座り、膝を抱える。そしてギュッと目を閉じた。 「一番不安なのは心ちゃんだろう…」 「貴女の世話係りですから…」
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