第一輪 少女の理由

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沖田の言葉、近藤の言葉が思い出される。行灯も付けず暗闇の部屋の中、心は一人胸が締め付けられていた。 『…私に関わらないで…』 カタン… 物音に気付き、目を擦る。いつの間にか眠ってしまっていたのだろう。体が冷えていた。 二の腕を摩りながら物音がした外が気になり、部屋の障子を恐る恐る開けた。 しかし、そこには誰もおらず朝方になりかけているのか、霧が出ている。少し安心した心は障子を閉めようとしたが、人の足が目に飛び込んできた。 『………』 「…スー……」 障子を開け外に出る。そこには、壁を背もたれに刀を抱えて眠っている沖田の姿があった。 その光景に心は言葉が出なくなる。 何故ここにいるのだろうか…。 やはり、自分を間者として見ているのだろうか…。 そんな考えが駆け巡るが頭の隅にやり、すぐに部屋に戻った。自分の着ていた着物を脱ぎ、寝間着に着替えると着物を沖田へと掛けてあげた。しばらく沖田の寝顔を見ていたが、部屋に戻った。 「…う…司……総司!総司!!」 「……ん…~??」 朝の日差しの中、荒々しく肩を揺すられ、沖田は目を覚ました。ぼんやり顔を上げると、そこに原田と永倉が面白半分に驚きが見られる顔で立っていた。 「お前何してんだよ。こんなとこで」 「昨夜は夜番だったらしいな。…まさか…疲れてそのままここで力尽きたのか?!」 トタトタ… 目を擦る沖田の恰好はなんと、ダンダラ模様の隊服のままだったのだ。二人が騒ぐ中、沖田は後ろ頭をポリポリとかくと心の部屋をちらっと見た。 「はっ!!!ままままさか…!!総司…!!お前心ちゃんに夜ば」 「心さん…」 『……おはよう…ございます…』 寝間着姿の心が来た。沖田は何故寝間着のままなのか気になり、立ち上がった際に気付いた。 「…これ……心さんのじゃ…」 『………』 落ちた着物を拾い上げ、着物と心を交互に見つめる。永倉と原田も二人を交互に見つめた。 心は沖田の問いに視線を落としつつも小さく頷く。すると、沖田は着物を心の肩に掛けてあげた。 『…あの……』 「総司ー!!さっさと着替えて飯食いに行こうぜ!」 心が口を開きかけたのと同時に原田が沖田の肩を掴み心を見ながら背中を小突く。 「!…よかったら…朝餉を」 「おぉ!心ちゃん!調度良いところに」 心は振り返り声の主を見た。
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