第十七輪 少女と青年の涙

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心が来た時にはすでに兄の吉田が沖田に斬りかかっていた。 兄の言葉と沖田の攻撃にすっかり足がすくんでしまい、その場に固まってしまった。 五十嵐の伝言で兄から、自分はすでにいらないのだと判断されている。 沖田からも…いらないのだと…言われたようなものだ…。 「“人”の価値は…他人が決めるものじゃない…!!」 俯きかけた心は顔を上げ、真っすぐ沖田を見つめた。 「…貴女の本当の気持ちを教えて下さい…」 ガシャァン!! 『……!!』 飛ばされた沖田を見たが、すぐに稔麿へ視線を戻す。 心は駆け出した。 咳込む沖田の声が耳に入るが、稔麿の考えを読んで二人の間に飛び込んだ。 その際に、拾った小刀を稔麿の右腕に思いっきり突き刺した。 背と腹にくる激痛に目眩を起こしながらも、心は兄の稔麿を睨んだ。 「…何故…お前がこ…こに……」 『……ゴホッ…』 抜かれる稔麿の刀…。 心の口からは鮮血が溢れた。 『に…いさ…んに…この人は…殺させ…ないっ……!!』 「……貴様…っ!!」 稔麿は再度刀を構えると心へ振り下ろそうとした。 ドガッ!!! 倒れる心を受け止め、今度は沖田が稔麿に蹴りを入れる。 雨戸と共に吹き飛ぶ稔麿を見もせず、沖田は心から刀を抜き安全そうな場所へ移動した。 沖田は片膝をつき、心の頭を上に乗せ枕替わりにした。動揺を隠しきれない沖田は震える手で、心の口元についた血を拭ってあげた。 「何で…っ…何でここに…!?」 グッ… 必死に呼吸をしながら、沖田の着物を握りしめる。そしてぼんやりと見つめた。 『沖田…様…見つけ、まし…た…』 「喋らないで…!!何故ここにいるんです…!!私は逃げろと…!!!」 『…私…、私…沖田様に…っ…言えなか…った…とが…っ』 溢れてくる涙。止まらない血…。沖田は必死に自分が刺した場所を手で押さえた。 『…私…は…っ、貴方に…沖…田、様だけには…信じ…て、欲し…い…!』 震える手を沖田へ伸ばす。沖田は掴むとギュッと握った。 ゆるゆると首を横に振って、零れそうになる涙を堪えた。 「…っ…信じるから…っ!!だからっ…!!!」 『貴方…に会え…て、幸せで…しっゲホッ……わた…しは…っ…貴…方に救わ……まし…た…』 心も沖田の手を握った。
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