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心が来た時にはすでに兄の吉田が沖田に斬りかかっていた。
兄の言葉と沖田の攻撃にすっかり足がすくんでしまい、その場に固まってしまった。
五十嵐の伝言で兄から、自分はすでにいらないのだと判断されている。
沖田からも…いらないのだと…言われたようなものだ…。
「“人”の価値は…他人が決めるものじゃない…!!」
俯きかけた心は顔を上げ、真っすぐ沖田を見つめた。
「…貴女の本当の気持ちを教えて下さい…」
ガシャァン!!
『……!!』
飛ばされた沖田を見たが、すぐに稔麿へ視線を戻す。
心は駆け出した。
咳込む沖田の声が耳に入るが、稔麿の考えを読んで二人の間に飛び込んだ。
その際に、拾った小刀を稔麿の右腕に思いっきり突き刺した。
背と腹にくる激痛に目眩を起こしながらも、心は兄の稔麿を睨んだ。
「…何故…お前がこ…こに……」
『……ゴホッ…』
抜かれる稔麿の刀…。
心の口からは鮮血が溢れた。
『に…いさ…んに…この人は…殺させ…ないっ……!!』
「……貴様…っ!!」
稔麿は再度刀を構えると心へ振り下ろそうとした。
ドガッ!!!
倒れる心を受け止め、今度は沖田が稔麿に蹴りを入れる。
雨戸と共に吹き飛ぶ稔麿を見もせず、沖田は心から刀を抜き安全そうな場所へ移動した。
沖田は片膝をつき、心の頭を上に乗せ枕替わりにした。動揺を隠しきれない沖田は震える手で、心の口元についた血を拭ってあげた。
「何で…っ…何でここに…!?」
グッ…
必死に呼吸をしながら、沖田の着物を握りしめる。そしてぼんやりと見つめた。
『沖田…様…見つけ、まし…た…』
「喋らないで…!!何故ここにいるんです…!!私は逃げろと…!!!」
『…私…、私…沖田様に…っ…言えなか…った…とが…っ』
溢れてくる涙。止まらない血…。沖田は必死に自分が刺した場所を手で押さえた。
『…私…は…っ、貴方に…沖…田、様だけには…信じ…て、欲し…い…!』
震える手を沖田へ伸ばす。沖田は掴むとギュッと握った。
ゆるゆると首を横に振って、零れそうになる涙を堪えた。
「…っ…信じるから…っ!!だからっ…!!!」
『貴方…に会え…て、幸せで…しっゲホッ……わた…しは…っ…貴…方に救わ……まし…た…』
心も沖田の手を握った。
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