第一輪 少女の理由

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永倉は残念そうに声を返し、持ち場に戻った。沖田は微笑みながらもふと、近くにいた数人の隊士と目が合った。組長と言っても一応、自分より年上なので軽く会釈をした。隊士も会釈を返すがすぐに頭を寄せ合い、ひそひそと話しを始める。 やれやれと感じる沖田は早足にその場を去り、玄関へと向かった。 「今日もお花見日和ですね~」 春の風と日の光を浴び、心地よい気分になっている沖田は自然と呉服屋へ向かう足取りが早くなる。 途中、珍しい漬け物や綺麗な干菓子を試食したりして歩いていた。たまに、怪しい不貞浪士がいないか周りに視線を送るが、それらしき浪人はおらず、少し安心した。 ドカラッ…ドカラッ…… そう思った矢先に事は起きた。 ドカラッドカラッドカラッ 遠くから人が逃げてくる。しかもだんだん、ざわつき悲鳴が飛び交う。沖田は浪士かなと振り返ったが、目を疑った。 人が行き交う道の中、馬が暴れ、走ってくるのだ。 辺りは逃げ回る人々で混乱している。沖田は人と肩がぶつかりながらも、ため息をつきゆっくりと馬に向かって歩を進めていった。 「お兄はん危ないで!!」 「…あれは…!」 周りの声など、耳に入らない程驚く光景が沖田の目に飛び込む。 なんと、暴れ狂う馬に人が乗っていた。しかも意識がないのか手綱だけ握りぐったりしている。そして馬が目の前に来た瞬間に沖田はすばやく一度横にずれ、乗り主が握っている手と重ね手綱を掴み取り、上手い具合に乗り合わせた。 その光景を見ていたのか、周りからは歓声が上がる。 しかし、このままでは目立ちすぎてしまうと思った沖田は、そのまま馬を走らせた。 馬はひどく興奮しているらしく、揺れが激しい。沖田はひどい揺れの中、乗り主の肩を掴み自分へと向かせる。 「もし!大丈夫ですか?!もし……!?」 気を失っている馬の乗り主に沖田は目を丸くした。 「お…女の子…?!」 そのまま馬を川原へと引き、落ち着かせた。 沖田は馬の上で少女の状態をよく見ようと顔を覗き込んだ。 幼い頃から女子との面識がそんなにない沖田は珍しげに見入っていた。 その少女は珍しくも前髪を出し、横髪や後ろ髪を垂らして後ろで青い髪結いで一つにまとめていた。まるで、戦国時代の時のような格好だ。
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