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『…ん……』
次に少女が目を覚まして見たものは茶色の天井。そしてピッタリと閉まった障子に少し臭い白い布団。ゆっくりと体を起こし周りを見渡した。そして自分の手の平を見つめる。
「なんでお前はいつも外に出ると厄介事を引き受けてくんだよ…!」
「人聞きの悪い事言わないで下さいよ!私だって別に好きで引き受けてるわけじゃなくてですねぇ!」
「やめんか、二人共。八木の方々の迷惑になる」
一人の男を筆頭に叱られながらも、どすどすと廊下を歩く沖田と土方。
少女の部屋の前に近づくとその音に気付いたのか、見つめていた手から顔を上げ障子を見た。すると、その障子はすぐに開き日の光りが部屋の中に指した。
少女は眩しそうに入口を見た。
「おぉ!起きていたか。気分はどうだ??」
『……』
ニコニコ笑って部屋に入ってくる男。続くように入る土方と沖田は障子を閉め、少女の横に座った。少し怯えながらも、男に頷いた。
「…そうか。あぁ…そんなに怯えずとも、斬ったりはせんよ。安心しなさい。」
「とりあえず、お前の姓名と出身藩は??」
沖田が聞いた時のように、戸惑う顔をした。そして一度俯くと、言いにくそうに第一声を上げた。
『……こ、心と言います……たぶん……』
「たぶんって……ふざけてんのか??」
めんどくさそうに袖口からキセルを取り出し口にくわえる。
少女は布団をにぎりしめ、震える声で吃りながらも反論した。
『…ふ、ふざけて…なんか、いません…!…何も覚えていないんです…ただ、覚えてるのは…自分の名前と…兄を探してるって事です…それから』
「歳さんよ。そういじめるな。心ちゃん。兄と言うのは、この京にいるのか??」
「……………」
優しい笑顔で心を宥めるように男は優しく諭す。沖田は目を大きく開けて、その少女を見つめていた。
『…わからないんです…。気付いたら、兄を探さなきゃいけないって思って…馬に乗っていたらしく……そこの人に助けていただきました』
「………」
沖田の方をちらりと見るが目を合わせようとはせず、すぐに俯いた。
『探さなきゃいけないんです……どうしても……』
「うん…うん…!!こんな広い都で兄とはぐれるとは…!!大変だったろう!!」
いきなり号泣する男。土方は呆れ、沖田は苦笑いする。しかし、心はわたわたと懐から手ぬぐいを差し出した。
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