独りよりふたり

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     土方よりも落ち込んでしまった凪。 「……おい。」  そんな凪を見兼ねて土方は声をかける。 「おめぇは独り身なのか?夫は?」 「夫!?いないです、いないです!それに私はまだ学生なので……。」  彼氏いる?などは聞かれたことがあるが、夫がいるかなど初めて尋ねられた凪。  ――……そうか…昔は私くらいの歳なら結婚していて当たり前だったんだ…。  改めて時代の差を感じた瞬間だった。 「それじゃあ家族は?」 「――……。」  “家族は?”  その言葉に凪は固まってしまう。  他人に家庭事情を話すには重過ぎる気がしたからだ。 「悪い。」 「……え…?」  突然謝罪を口にした土方に凪はきょとんとする。 「…いや、話ずれぇ事を聞いちまったようだから。」 「……土方さん……。」 「詮索はしねぇ。誰にだって踏み入れて欲しくない事一つや二つあるもんだろ。」  そう言ってくれる事に凪は感謝した。家族の事は触れてほしくない。考えたくもない。  傲慢な人だと思っていたが、案外そうでも無いかもしれない。 「あの、聞いてもいいですか?」 「あ?」  せっかくの会話の機会を逃すまいと凪は遠慮がちに言う。 「土方さんは新選組の副長だったんですよね。」 「“だった”じゃねぇ。副長だ。」 「すみません!つい……。」  ぎろりと睨まれ、早速墓穴を掘ってしまった。 「…嫌じゃなければですが、新選組の事聞かせてくれませんか?」  生活を共にするなら少しは知っておきたい。それに、元いた時代での土方も知りたい。  壁から背を放すと、土方は凪と向き合うように座り直した。  どうやら話してくれるようだ。  
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