独りよりふたり

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    「どが過ぎる程良い人でな、近藤さんは。陽気な性分でよく笑う。」 「新選組の局長さんが?」  意外とも言いたげな凪だが、それもその筈。  捉え方によっては人斬り集団である新選組の頂点が、そんな人が良く笑う?想像がつかないのだった。 「土方さんはその近藤さんて言う人が大好きなんですね。」  昨日の今日での性格を明晰すると、土方は非常に警戒心が強い。  そんな彼が認め、良き評価をするのだ。きっと凪が思い描いていた、厳つくて荒っぽい人とは程遠いだろう。 「なんか、会ってみたいなぁ。」  ぽつりと零れた独り言に偽りは無い。 「いつか会わせてやんよ。」 「え……。」 「会いてぇなら何時か会える。」  その言葉の裏には“必ず帰れる”という意味が含まれているように感じられた。  ――土方さんが元の時代へ戻れれば…また独り……? 「――はい!楽しみにしてますっ――……。」  寂しさを感じながらも凪は笑顔を造ると、土方も微笑んだ。  その微笑みが凪の胸をぎゅっと鷲掴んだとは言うまでもない。 「他の方の話もして下さいよ!」 「あぁ、いいぜ。弟分に総司っちゅう悪ガキがいてな――……。」  再び話を始めた土方に凪は聞き入った。  想像とは違った新選組の隊士達。  殆どが農民、商人の出身でありながら歴史に名を残し、誠を貫き生きた男達。  平和ぼけした現代の人々が絶する戦いを繰り出したであろう彼等だが、確かに笑って生きていた。  目の前で笑みを浮べる彼も人を斬り、その手を血に染めた。  そっと凪は土方の大きな手に視線を落とした。  ――その手で彼は誠を守ったんだ。ううん。守っているんだ。      
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