独りよりふたり

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     僅か一分足らずのやり取りだったが、多大な疲労感を背負い我が家の扉を開けた。 「……ただいま帰りました…。」  それでも誰かが部屋にいる、という現状が嬉しくて笑顔で奥へと足を進めた。 「何やってるんですか。」  茜色が差し込む透明の戸にぴったりと張り付く土方がいた。 「何か見てるんですか?」  振り向くどころか返事もしない程、彼を夢中にしているものを見てやろうと凪も覗いてみた。 「――……変んねぇんだな…幾ら時が経とうと空だけは。」 「空?」  陽が落ち、幻想的な彩りを飾る夕暮れの空を見上げていた土方はどこか切なそうだ。 「……帰りたいですか?」  真直ぐな瞳で空を見つめる土方は少し間を置くと口を開いた。 「…そうだな。まぁ俺が消えて喜ぶ奴は大勢いるだろうがな。」 「どうしてですか?」 「俺ぁ、手段を選ばねぇ鬼だ。」 「……お、に……?」  首を傾ける凪を一瞥した土方は続ける。   「局中法度を知ってるか?」 「いえ……。」 「俺が創り上げた組の掟だ。」  局中法度  新選組の規律維持のため創られたこの法により、士道に背く者には容赦無く粛清された。  これによって死した隊士は大勢いた。隊士達が最も恐れていたのは、局中法度であったと言っても過言ではないだろう。 「――…俺ぁ何やってんだかな…………。」  悔しそうだった。  歯噛みする土方は酷く口惜しそうに顔を歪ませた。  見ていれなくなった凪は涙が溜めながら目を逸らした。その反動で一粒頬に滑り落ちる。  
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