独りよりふたり

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     鼻の啜る音に気が付いた土方は下方へ目を移す。そこには涙を流す凪。 「――っ何でおめぇが泣くんだよっ!?」  どの時代の男も女の涙には弱いらしく、土方は動揺し慌て出す。 「…ふ……だっ、…ひっ…い…っ…!」 「ああっ!?」  嗚咽混じりに聞える言葉に耳を澄すが、何を言っているのか全く聞き取れない。 「……あー―…落ち着け…ほら……。」  武骨な手で凪の背を擦ってやると、徐々に嗚咽が緩やかになる。  凪は指で涙を拭うと酸素をたっぷり吸って息を整えた。 「……すみません…ぐす……。」 「…いや…で、言いたい事あんだろ?」 「…あ……。」  先程は取り乱した勢いで口走ったが、改めて言葉にするのに躊躇いを感じる。  ――…だって、土方さんが帰りたいって事を知ってるのに居なくなったら寂しいだなんて…不謹慎だよ……。  俯く凪を土方は怪訝そうに覗く。 「隠してんじゃねぇよ。」  そう言って凪の肩を包んで自分と向き合わせた。 「泣いといて黙り込まれちゃあ居た堪れねぇな。言えよ。」 「だって――、」 「言え。」  厳しくさえ聞こえる声色にも凪の胸を高鳴らすには十分の代。 「…私、すっごく自分勝手です――…土方さんが…居なくなるの、嫌だって……。」 「―――……。」  泣きっ面の頬に朱が灯る凪を呆気にとられた面持ちで見つめる。  出会って幾日を経たないが、自分が居なくなると“寂しい”と涙する少女。  元いた時代では“恋しい”と泣き付かれた事は度々ありはしたが、凪の涙に下心など含まれていなく、  ――…純粋に必要とされている。  ただ、そう思えた。  
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